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薬物使用のドライバー どこまで事業者責任か
 飲酒・酒気帯び運転が社会問題としてクローズアップされ、トラック運送事業でも昨秋から行政処分が一段と厳しくなった。一方、出先での飲酒行為とともに、かねて業界のドライバーに蔓延しているとささやかれてきたのが薬物の問題。  
 「その場で検査できる飲酒とは違ってチェックが難しいにもかかわらず、こうした個人の反社会的行為の責任まで、トラック事業者が背負わなければならないのか」と過日、所属ドライバーが薬物使用で運転中に交通事故を起こした会社幹部は話す。  

 行政処分の基準強化によって昨年10月以降は、仮に飲酒運転を下命・容認すれば即座に14日間の事業停止となるのをはじめ、飲酒ドライバーが事故を起こす・起こさないに関係なく、事業者側に指導監督の義務違反が見つかれば7日、もしくは3日間の事業停止。これが適用されるのは「飲酒運転等...」と記されているようにアルコールだけでなく、覚せい剤などの薬物も含まれる。  

 14日間の事業停止は企業にとって致命傷となりかねないが、「なぜ14日なのか」と国交省に確認すると、「安全プラン2009を踏まえ、従来(の処分日数)と比較して決定されたもの。日数の根拠はない」(安全政策課・監査担当)と説明。そのうえで「例えば14日間については『酒臭いと知りながら...』ということであって、そんな企業には事業を辞めてもらうのが当たり前」と話す。  

 行政処分の対象として「飲酒等」に含まれるものの、薬物使用については同担当官も「判断が難しい」と回答。この言葉は先に、薬物使用ドライバーが事故を起こした運送会社の幹部の話からも実感できる。  

 酒のように検知器を使って日常の運送現場でチェックができず、かといって放置すれば下命とまでいかなくても、容認の責任を問われる可能性もある。  

 ドライバーによる薬物使用という不祥事を受けて、同社では抜き打ち検査をしたが、「スポーツ選手のドーピング検査を手掛ける専門施設にドライバーの尿を送り、時間とカネをかけてようやく白黒がはっきりするのが実情」(同幹部)という。1人の検査費用は1万5000円程度で、多くのドライバーを抱える同社の出費は予想外に膨らんだ様子。  

 「いろんな薬物が街中に出回り、簡単に高校生でも手に入る状況では、ドライバーの間でも以前に増して『睡魔を追い払う』目的から広がっている可能性もある」と指摘するのは、警察OBでもあるトラックの業界団体関係者。  

 点呼時にアルコール検知器を使用し、それを記録・保存する新しいルールが来年春にも始まる見通しだが、それによって従来の「点呼の未実施」イコール「飲酒確認の未実施」につながる側面もある。「飲酒と違ってチェックが難しい」という薬物使用の対応策など、どうすれば企業として責任を果たしたと見なされるのか...前出の幹部は疑義を呈している。

(10/04/02)

<記事提供:物流ウィークリー


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