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 相次ぐ「重大処分」 新ルールに未だ困惑の声も
 トラック運送事業の監査方針および、行政処分の基準などが厳格化されて丸1年が経過した。新ルールに則った重大処分も相次いでいるが、運送現場からは相変わらず、「どんな問題で、どれくらいの処分になるのかわからない」との声が聞かれる。最大の懸念は事業停止だが、8月に入って西日本地区の運送事業者に発出された「事業停止14日間、車両停止352日車、運管資格の返納」という厳しい処分の端緒や背景からは、すべての中小・零細事業者が「あすは我が身」の立場である現実が見えてくる。

 物損事故を起こしたドライバーは酒気帯び状態だったという。所管する運輸支局の担当官によれば、「警察当局が会社ぐるみ(下命・容認)という判断をした場合は一発の事業停止になるが、今回の例は『悪質な違反』ということで再違反条項を適用。その積み重ねが結果として重大処分になった」と説明。

 監査で見つかった違法な実態のうち、「酒気帯び」以上に処分へ大きな影響を与えることになったのが「定期点検整備」で、事業者に付された違反点数は計59点。10日車当たり1点の計算となるため、同事業者に科せられた延べ日数は590日車となるが、そのうちの「425日車」が3か月点検の未実施によって加算されたのだ。

 同事業者の保有トラックは16台だったが、担当官の話では「13台が1年間を通じて一度も点検整備を実施していなかったほか、残りの3台も2台が1回と、もう1台が2回の状態」。結果として、13台に1台当たり30日の計390日車が科せられたのをはじめ、1回実施の2台には各15日、2回実施の1台にも5日間がカウントされ、この部分だけで処分点数全体の72%を占める形になった。

 このほか、「連続運転時間」の違反で90日、点呼が「半分以上できていない」ことで60日間などが加算されているが、「運転時間や点呼の問題をパーフェクトにクリアしている中小事業者は極めて少ないのが実情だろう」(地元の同業者)との声も聞かれる。また、運賃低迷の影響もあって「3か月はすぐに経つ。そのたびにカネをかけて点検整備するのは大変」(別の同業者)という苦しい台所事情もある。

 14日間の事業停止に加えて、その後の車両停止(352日)には2台がそれぞれ117日間、1台が118日間で対応することになったが、同時に出された「輸送の安全確保命令」に従って運行管理者資格者証の返納も命じられた。

 運管者による指導・監督が不十分だったと指摘された形だが、当局によると「同事業者の場合は資格者が(返納になった)1人しかおらず、3か月間の猶予期間に新しく雇い入れるなど適切な対応が必要になる」という。

 そのうえで「累積点数(50点超)で事業停止となったが、次に事故などで21点以上(210日車以上)の違反があった場合は許可の取り消しになる」と厳しい現実も説明している。

(10/10/22)


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