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 熱中症であわやの事態 救急連絡の体制作りを

 最高気温が35度以上の猛暑日が続き、熱中症による死者数は過去最高を記録している。

 残暑厳しい現在も熱中症についてはトラック運送業でも警戒が必要だ。今年のトラック運転者の熱中症による死者はまだ集計がまとまっていないが、労働局関係者は「油断はできない。熱中症対策とともに、熱中症発生時における社内の連絡体制作りが求められる」と強調している。

 関西の運送会社では先日、運転者が熱中症の疑いがあったという。荷主の構内での荷下ろし待ちでのこと。荷主は環境対策に熱心で、構内では一切のアイドリングを禁止し、アイドリングが見つかれば出入り禁止になる。しかし待機場所は設けられておらず、運転者はエアコンのかからないトラックで荷下ろしの順番を待たなければならなかった。

 当日、体調がすぐれなかったというその運転者は、窓を全開にしてうちわを使いながら猛暑に耐えていたが、昼前にぐったりしてしまい、他社の運転者らの発見で事なきを得たという。

 「この夏、熱中症にかからずとも、それに似た症状の運転者は結構いたのでは」と運送会社社長は話していたが、熱中症によるトラック運転者の死亡は珍しくないようだ。

 昨年8月、大阪府(羽曳野労基署管内)で30歳代の男性運転者が熱中症で死亡した。発生時刻は午後4時頃。発症の3日前に入社し、研修としてトラックで1日80軒ほどの宅配補助業務を行っていた。

 発症の朝もいつも通り作業を行っていたが、午後の配送中に気分が悪くなり、足がふらつき、路上でうずくまっていたため救急搬送された。意識不明の状態が続いていたが6日後に死亡した(当日の最高気温32.5度、平均湿度73%)。

 同労基署は、「熱中症対策とともに熱中症発生時における救急搬送の体制づくりが求められる」と強調する。今回の事例でも熱中症の症状を確認してから救急車を呼ぶまでに20分程度かかっている。一刻を争う中で連絡の体制ができていなかったため伝達の堂々巡りが行われ、その間に運転者の容体は悪化してしまったようだ。

 「熱中症対策には救急連絡の時短の体制作りが不可欠」と同労基署。まず、熱中症の症状としては、自力で水分の補給ができるか。できなければ、応急処置とともに救急車を呼ぶ。その救急車を呼ぶ指示が出せる責任者を定めておく。現場の作業員が直接、責任者に連絡して指示を仰げる体制にし、搬送までの時間を短縮することが肝要であるとのこと。

 現場では突然の出来事に戸惑ってしまい、救急車を呼ぶことに抵抗を感じるケースもあると考えられるが、一番いいのは現場サイドで直接、救急車を呼べる体制作りだ。「いざというときのルール作りが大切。多人数を介在させず、ワンストップで連絡できる体制が生死を分けることになる」と同労基署は話している。

(10/09/03)


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