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9割近くが労基法違反
 東京労働局が行った監督指導で、トラック事業者の9割近くが「労働基準法」に抵触する何らかの法令違反をしており、また半数近くが「改善基準告示」に違反していることが判明した。  

 今年3月には青梅労基監督署管内でドライバー3人に対し、36協定で決めた延長時間を超え、1日最大で11時間40分、また2週間最大で69時間45分の時間外労働を行わせたことが発覚、事業者が送検されている。労働時間関連では従来、是正勧告などで終わるケースがほとんどだったが、「重大または悪質な事案」が増えていることから東労局は今後、「重大事故の未然防止のためにも刑事罰を伴う司法処分を行うなど厳正に対応していく」方針を固めた。  

 東京都内におけるトラック事業の年間総実労働時間は2093時間で、全産業の平均1854時間を大きく上回る。このため東労局は、長時間労働による過労運転防止を主眼に「労働基準法および改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の順守の徹底を図る」として毎年、管下18労基監督署でトラック事業者に対する労働時間の監督指導を行っている。  

 09年度は無作為に83社を抽出して行った結果、72社(86.7%)に「労基法」関連で何らかの法令違反が認められた。  

 このほか「法定労働時間に係る違反」(労基法第32条)47社(56.6%)、「割増賃金に係る違反」(同37条)29社(34.9%)、「法定休日に係る違反」(同35条)5社(6.0%)など。08年度は「労基法」違反が81.8%、その他の違反も「法定労働時間」53.1%、「割増賃金」30.1%、「法定休日」4.9%などで、いずれも状況が悪化していることが分かった。  

 改善基準告示も、83社のうち、「何らかの違反が認められた」は39社(47.0%)。違反内容をみると「最大拘束時間」34社(41.0%)、「総拘束時間」22社(26.5%)、「休息期間」22社(同)、「連続運転時間」14社(16.9%)、「最大運転時間」5社(6.0%)、「休日労働」4社(4.8%)など。08年度に何らかの違反が認められた割合は41.3%。「最大拘束時間」32.2%、「総拘束時間」119.6%、「休息期間」21.7%など、すべての項目で違反割合は09年度より低かった。

 トラック事業では長時間労働体質の下、厳しくなる一方の経営環境とともに、年々違反事例が増え続けている。さらに匿名の投書やファクスといった手段での内部告発も増えており、これを契機に臨時の監督指導が行われ、違反が発覚するケースも多いという。  

 労働者から「A社で長時間労働、サービス残業が行われている」との情報が入った労基監督署では早速、A社を監督指導したところ、運転前の点検および運転後の洗車時間が労働時間に含まれてないことが判明。改善基準告示を超える拘束時間違反などが認められたことから是正勧告を行った。その結果、運転時間前後の労働に対する賃金が遡及して支払われ、改善基準告示に適合した労働時間管理が行われるようになり、長時間労働も解消したという。  

 監督指導に従わず、過労死を引き起こした例もある。清涼飲料水の運送を行うB社に労基監督署が監督指導を実施したところ、「長時間労働」が認められたため是正を勧告。その後、再三指導したにもかかわらず、是正されないままB社のドライバーが心臓疾患で死亡した。  

 ドライバーの死亡は長時間労働に起因するものとして労災認定されると同時に、B社社長は労基法違反で書類送検された。東労局労働基準部の監督担当官は「東京でこれほど違反が増えていることに正直、こちらも驚いている」と話す。

 さらに「監督指導を無視しての過労死は、必ず労災認定される」と指摘。「労基法や改善基準告示に違反した長時間労働での事故が非常に目立ってきた。厳しい状況は分かるが、事故を起こしてからでは間に合わない。司法処分が行われる前に、どうか労働時間についての法令を守ってほしい」と呼び掛けている。

(10/06/11)

<記事提供:物流ウィークリー


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