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宮原氏(左)と有富氏
ヤマトと日本郵船が「戦略的提携」
 ヤマトホールディングス(有富慶二会長兼社長、東京都中央区)と日本郵船(宮原耕治社長、同千代田区)はこのほど、両グループの「戦略的提携」について基本合意書を締結、陸・海・空にわたる広範な業務提携を進めるとともに100億円規模(両社で200億円)の資本提携を実施することを決めた。大手企業によるコラボレーションは珍しくなくなったが、ここまで大規模な資本提携は物流史上初めてとなる。

  業務提携では、資本金20億円(両社で10億円ずつ出資)の新会社「郵船ヤマトグローバルソリューションズ」を6月1日付で設立。国際物流分野などで事業開発に取り組み、3年後には売上高170億円、経常利益15億円を目指す。両グループの航空フォワーディング事業でも「一体的運営」実現を進めるとしており、今後、物流業界全体の再編に少なからず影響すると注目される。

 合意書では「企業、個人向け物流のグローバル化をはじめ、陸・海・空の物流事業における競争環境の変化が進む中、両社およびそれぞれのグループ企業の『国内・海外の経営資源を有機的かつ効率的に最大限活用』し、顧客の『グローバルかつ多様なニーズに機動的かつ包括的に対応した、より高度かつ戦略的なサービスを提供する』ため」と提携の趣旨をうたっている。

 共同出資の新会社は当面、「国際物流における一貫輸出入ロジスティクス」「中国市場をターゲットとする企業間物流」「ICタグを利用した輸送部材管理・リース」の3分野のサービス提供で事業を開発。資本提携では、日本郵船がヤマトホールディングスの株式60億円、ヤマトロジスティクスの株式30億円を取得。一方、ヤマトホールディングスは日本郵船の株式60億円、郵船航空サービスの株式20億円、日本貨物航空の株式10億円を取得する。さらに両社それぞれ10億円を新会社に出資、「業務提携のプラットフォーム」として展開する計画だ。

 同日開かれた共同会見で、宮原社長は「海外と企業向けに強い日本郵船グループと国内、個人向けの物流・情報ネット、決済手段で優れたノウハウを持つヤマトグループが互いに補完し、一層の顧客サービス充実を図る」と説明し、「今回の提携を不退転の決意で進めていく」と強調した。

 有富会長兼社長は「産業のグローバル化が進む中、当社の力不足を感じていた。ともに顧客に喜んでもらえる商品開発こそ最優先されるべきとの考え方で一致した」と経緯を説明。
 
 今後、双方の資産やノウハウを活用した「広範な提携」「新事業展開」について、ヤマト側が木川眞常務執行役員、日本郵船側は石田忠正副社長がそれぞれリーダーとなり発足させた共同運営委員会(ステアリングコミッティー)で検討していく。会見では「国内物流で現在、日本郵船から直接受託している他の陸運各社に代わり、ヤマトグループが(元請けとして)入ることになるが、個々の契約や取引条件変更などは進んでいるか」との質問に、有富氏は直截的な表現を避け「急激な変化はない」と回答。ただ「将来的には(ヤマトが元請けとなる場面が)ある」と付け加えた。提携は決して同業他社を排除するものではないとしながら「機能的に可能ならご一緒することもある」と述べた。

 連結売上高では、日本郵船が1兆6060億円(05年3月期)、ヤマトが1兆1449億円(06年3月期)と、いずれもわが国物流業界を代表する1兆円企業。複雑化する物流環境に対応するための戦略的な提携が業界再編の胎動であることは間違いない。

                         
(06/05/12)
<記事提供:物流ウィークリー


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