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ドライバーの過労が深刻化 運行管理に問題か…
 ドライバーの過重労働ぶりが深刻さを増している。国土交通省では近年、行政処分の状況をホームページに掲載・公開しているが、ある地方運輸局が昨年8月から今年1月までの半年間で行った処分43件のうち、およそ85%(36件)が過労など運行管理面の問題。かつて主因とされてきた過積載などから完全に取って代わっているのが実情だ。過日、一般紙がタクシー・ドライバーの過労・低賃金ぶりをトップ記事として取り上げたが、輸送対象の違いからか従来、同じ状況にありながらも非常事態を取りざたされることの少なかった貨物輸送。しかし、いったん事故を起こせば重大事件となる可能性が大きいだけに、その対策が急がれている。

 トラック運転者が置かれている現在の労働環境の深刻さは、巡回指導で運送会社を訪問している適正化実施機関の指導員からも多く聞かれる。あるベテラン指導員によると「巡回指導の結果は5段階に分けられており、そのうちの『非常に悪い』『悪い』とされる事業者については運輸支局へ報告書を提出しているが、その件数は毎月100件を超えるようになっている」という。

 隣接する県ト協でも同様の状態で、調査項目を見ても従来の重点項目だった「名義貸し」や「過積載」でチェックされた事業者は激減している半面、「乗務員への安全指導監督」「運転者の適正診断受診」「定期健康診断」などの項目にチェックが入るケースが急激に増えているのがわかる。「これだけの資料がそろっていながら、これまで大きな問題として取り上げられなかったのは、『悪い』という指導員の報告書が行政処分や、行政監査につながることが皆無だったため」と別の指導員は話す。

 一般紙報道されたタクシー業界では、2月から国交省がタクシー会社に対する抜き打ち監査を導入し、さらに4月からは厚生労働省と合同での抜き打ち監査にも乗り出すという。しかし、トラック事業関連でも昨年末、同様に監査方針・行政処分基準の一部改正が公示され、2月1日から適用されているのだ。「原則無通告」で実施されるという監査の対象は、指導員による巡回指導で「非常に悪い」「悪い」とされてきた運送会社となる。

 本来なら指導員の報告に基づいて逐一、適正な監査・指導がなければならず、それでこそ巡回指導・報告の意義があるわけだが、実際には従来、大きな事故を起こした際に芋づる式に不適正な実態が行政処分されることはあっても、報告書の内容だけで「×」が与えられることはないのが実情だった。そうした事情が指導員らに虚無感を抱かせ、ひいてはマンネリ指導につながっていたことは否定できない。事実、「これまでの巡回指導で、重ねて『非常に悪い』と報告していた事業者が最近、重大事故を起こす例が目立っており、ある意味で防げた事故が繰り返されている」と指摘する指導員も少なくないのが現実だ。そのため、「今回の改正でも本来の指導に変化がないなら、本当にダメかもしれない」との声も聞かれる。

 規制緩和の先頭に立つ格好で、矢継ぎ早に事業形態の変化を求められてきたトラック運送事業。入り口ではなく、後から不正実態を監視・処罰するのが規制緩和のスタンスだ。免許から事業許可制へシフトするに当たって、新法の裏付けを得て適正化実施機関による巡回指導がスタートして15年余り。しかし、実際には機能不全は顕著で、少なくとも現在までは事後チェック体制が働いていなかったことを、あらためて行政当局も重視しなければならない。
                         
(06/02/17)
<記事提供:物流ウィークリー


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